グッバイ、Starlinkの一時停止。または僕は如何にして心配するのを止めてStarlinkを使い続けると決めたか
クラウドエンジニアはStarlinkの一時停止機能の廃止にどう対応したか?
Table of contents
author: Yoshio
※本記事の金額は2025年9月18日現在のものとなっています。
グッバイ、一時停止。フォーエバー無料ランチ。
こんにちは、レッドブルとモンエナの違いが分かるGIクラウドのスペランカーYoshioです。エンジニアがStarlinkを使ってワーケーションをした話を執筆して間もない、8月のある暑い日、Starlinkから一通のメールが届きました。それは、これまで多くのROAMプランユーザーが重宝してきた「無料の一時停止機能」を廃止し、新たに有料の「スタンバイモード」を導入するという知らせでした。旅行、万が一の災害時の備えとしてStarlinkを契約し、使わない月はサービスを一時停止することでコストを抑えていた僕は、この知らせに、正直「改悪だ」「ついに有料化か…」とげんなりしました。F2K EM。F2って書くと竜巻みたいだなぁ。F5までヘイトが溜まったらレスナーが投げてくれるかなぁ。なんて、しょうもないことを思いながら、この新プランに切り替えるか否かの情報収集していると、この変更はStarlinkのマネタイズを目的とした有料化という単純な話で終わらせるにはもったいないという側面が見えてきました。そして熟考の末、僕は解約ではなく、月額730円の「スタンバイモード」と共にStarlinkを使い続けることを決めました。 この記事では、なぜ僕がその決断に至ったのか、その思考のプロセスを共有します。
便利だった「無料一時停止」の致命的な欠陥
まず、従来の無料一時停止機能がどれほど魅力的だったかを振り返る必要があります。使わない月は料金が一切かからない。これほどユーザーフレンドリーな仕組みはありませんでした。ハードウェアさえ購入すれば、あとは必要な時に必要なだけ、インターネットが使えたのです。ガジェットの所有欲を満たすこともできて一石二鳥。 ただ、その機能には1つの「お約束」がありました。それは、サービスを再開するためには、別途インターネット接続が必要だということです。 この仕様は、Starlinkが最も輝くべきシチュエーションにおいて、致命的な矛盾を生み出していました。 僕たちがStarlinkに本当に助けを求めるのはどんな時か?それは、携帯電話の電波も届かない山奥のキャンプ場や、大規模な災害で地上の通信インフラがすべて麻痺してしまった時ではないでしょうか。そんな「通信のデッドゾーン」でこそ、Starlinkは僕たちの生命線となるはずです。 しかし、従来の一時停止機能では、その生命線を起動するために、別の生命線(携帯回線など)が必要だったのです。これでは、いざという時に「使えない」という最悪の事態が起こり得ます。便利さの裏に潜むこの構造的欠陥は、サービスの信頼性を根底から揺るがすものでした。 災害時において、実家という存在は、家を出た家族たちのハブとして機能します。そんな実家に暮らす僕は、そのインフラを整える義務があります。そういう思いがあったため、この構造的欠陥は看過できないものでした。
スタンバイモードが解決したこと
ここで登場したのが、月額730円の「スタンバイモード」です。一見すると、無料だったものが有料になっただけのようにも見えます。しかし、ユースケース次第では、その本質が大きく異なります。 スタンバイモードは、月額730円で最大0.5Mbps(500kbps)の低速通信を無制限に利用できるプランです。これにより、いつでも、どこにいても、Starlinkのアンテナとアプリさえあれば、高速なROAMプランへ即座に切り替えることが可能になったのです。 携帯電波が圏外の山中でも、災害で孤立した場所でも、Starlink単体でサービスを再開できる。この一点だけで、月額730円を支払う価値は十分にあると僕は判断しました。これは単なる有料化ではなく、サービスの信頼性を担保するための「進化」であると自分を騙したとも言えます。
0.5Mbpsって、意外とできることが多い
とはいえ、気になるのは「0.5Mbpsなんて低速で何ができるのか?」という点でしょう。僕も最初は、プラン変更くらいしかできない、おまけのようなものだと考えていましたが、この「サバイバル速度」とも言える0.5Mbpsは、想像以上に実用的です。LINEでのテキストのやり取りはもちろん、音声通話も十分に可能です。音声通話やメッセージングができるのであれば、緊急時の連絡手段としては全く問題ありませんし、SpotifyやRadiko、Youtube Musicといった音楽・ラジオアプリも十分楽しめるでしょう。僕のように、ゲームやストリーミングといったオンラインサービスをほとんど使わない人間からすれば、オンライン会議さえしなければ仕事もどうにかできてしまう通信速度です。 確かに、YouTubeを高画質で観たり、Zoomでビデオ会議をしたりするのは困難です。しかし、スタンバイモードの役割はそこにはありません。その真価は、**「通信の生命線を最低限維持し、いつでも高速通信へと移行できる準備を整えておく」**ことにあるのです。
月額730円は「安心」への投資
僕のStarlinkの主な利用シーンは、年に数回の旅行と、万が一の災害への備えです。常時、光回線並みの速度は必要ありません。 そこで、コストを比較してみました。
概要 | 年間のコスト | |
---|---|---|
ケース1 | 1年間スタンバイモードで維持し、夏休みの1ヶ月だけROAM 50GBプラン(月額6,500円)を利用する。 | (730円 × 11ヶ月) + 6,500円 = 14,530円 |
ケース2 | 1年間ずっとROAM 50GBプランを契約し続ける。 | 6,500円 × 12ヶ月 = 78,000円 |
僕のような断続的な利用者にとって、必要な時だけ高速プランに切り替える「ハイブリッド運用」が、妥当な選択であることは明らかです。 そして、月額730円、年間8,760円というコストは、「いつでも、どこでも、確実にインターネットに接続できる」という安心感を得るための保険料だと考えれば、まぁ合理的の範囲に収まるでしょう。
まぁ、どうせ値上がり祭りするんだろ?知ってる。ただ、今だけは強がらせてほしい。
Starlinkとの新しい付き合い方へ
Starlinkの一時停止機能の廃止は、僕たちユーザーに、サービスとの付き合い方を見直す機会を与えてくれました。「コストゼロで死蔵させる」という選択肢はなくなりましたが、その代わりに「低コストで、いつでも確実に使える状態で維持する」という、実用的な選択肢が新たに提示されました。これは、災害時をユースケースとして想定した人には非常に大きな利点です。2025年9月20日が切り替えのデッドラインです。この記事が切り替えるか否かの判断に役立てば幸いです。多少、自分を騙す必要はありますが、納得してプランを切り替えられるのではないでしょうか。
※本記事は、ジーアイクラウド株式会社の見解を述べたものであり、必要な調査・検討は行っているものの必ずしもその正確性や真実性を保証するものではありません。
※リンクを利用する際には、必ず出典がGIC dryaki-blogであることを明記してください。
リンクの利用によりトラブルが発生した場合、リンクを設置した方ご自身の責任で対応してください。
ジーアイクラウド株式会社はユーザーによるリンクの利用につき、如何なる責任を負うものではありません。