Looker Studioのパラメータで実現する動的な条件付き書式!インタラクティブな表で分析を加速する
Looker Studioのパラメータ機能と条件付き書式を連携させ、ユーザーが動的に表のハイライト条件や閾値を変更できるレポートの作成方法を解説します。
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author: takei
はじめに
SIグループのtakeiです。 今回はLooker Studioの便利な機能の1つ、「パラメータ」を使って、レポートの表現力を一段と高めるテクニックをご紹介します。具体的には、パラメータと「条件付き書式」を組み合わせることで、レポートの閲覧者が自分でハイライトしたい指標やその条件となる数値(閾値)を自由に変更できる、そんな動的な表を作成する方法を解説していきます。静的なレポートから一歩進んで、ユーザーのアクションに反応するインタラクティブなレポート作成に挑戦してみましょう。
概要
Looker Studioは、様々なデータソースに接続し、視覚的でインタラクティブなダッシュボードを無料で作成できる非常に強力なBIツールです。その中でも「パラメータ」は、レポート閲覧者が値を入力できる変数のような機能で、レポートの柔軟性を大きく向上させます。一方の「条件付き書式」は、指定したルールに基づいて表やグラフのセルの色などを変更し、重要なデータを際立たせるための機能です。
この記事では、これら2つの機能を連携させることで、「ユーザーがプルダウンで選択した指標と、入力した閾値に基づいて、表の行を動的にハイライトする」という、より高度なデータ可視化を実現する方法を、具体的な手順を追いながら詳しく解説します。
動的な条件付き書式の設定方法
それでは、実際に動的な条件付き書式を設定していく手順を見ていきましょう。今回はサンプルとして、国別の売上と利益率のデータが含まれる表を使い、「売上」または「利益率」のどちらをハイライトするか、そしてその閾値はいくつにするかをユーザーが選択できるレポートを作成します。
Step 1: パラメータを作成する
まず、ユーザーが操作するための「パラメータ」を3つ作成します。ハイライトする指標を選択するパラメータと、それぞれの指標の閾値を入力するためのパラメータです。
- Looker Studioのレポート編集画面上部のメニューから「リソース」を選択し、「追加済みのデータソースを管理」をクリックします。
- 表示された画面の右下にある「パラメータを追加」ボタンを押し、1つ目のパラメータを以下のように設定します。
- パラメータ名:
ハイライト指標選択
- データ型:
テキスト
- 使用できる値:
値のリスト
- 値と表示名:
- 値:
売上
, 表示名:売上
- 値:
利益率
, 表示名:利益率
- 値:
- デフォルト値:
売上
- パラメータ名:
- 続けて「パラメータを追加」を押し、2つ目のパラメータ(売上の閾値用)を設定します。
- パラメータ名:
売上閾値
- データ型:
数値 (整数)
- デフォルト値:
5000000
- パラメータ名:
- 同様に、3つ目のパラメータ(利益率の閾値用)を設定します。
- パラメータ名:
利益率閾値
- データ型:
数値 (浮動小数)
- デフォルト値:
0.15
- パラメータ名:
この設定により、レポート上で指標選択と閾値入力するための準備が整いました。
Step 2: パラメータを操作するコントロールを配置する
次に、作成したパラメータをユーザーが操作できるように、レポート上にコントロール(操作部品)を配置します。
- レポート編集画面のメニューから「コントロールを追加」をクリックし、「プルダウン リスト」を選択してレポート上に配置します。
- 配置したプルダウンリストを選択し、右側のプロパティパネルの「設定」タブを開きます。
- 「コントロール フィールド」で、先ほど作成したパラメータ
ハイライト指標選択
を選択します。 - 次に、メニューから「コントロールを追加」をクリックし、「入力ボックス」を選択してレポート上に配置します。
- 配置した入力ボックスの「コントロール フィールド」で、パラメータ
売上閾値
を選択します。 - もう1つ「入力ボックス」を配置し、同様に
利益率閾値
パラメータを割り当てます。
これで、閲覧者はプルダウンリストで指標を選択し、入力ボックスでそれぞれの閾値を自由に変更できるようになりました。
Step 3: 条件を判定する計算フィールドを作成する
ここが今回のテクニックの核となる部分です。パラメータで選択された指標と入力された閾値を比較し、条件付き書式で利用するための「フラグ」を立てる計算フィールドを作成します。この計算フィールドは、CASE
文を使って実装するのが便利です。
- レポート右側のデータパネルの下部にある「フィールドを追加」をクリックします。
- 「計算フィールド」の作成画面が開きますので、以下のように設定します。
- 名前:
ハイライト判定フラグ
- 計算式:
CASE WHEN ハイライト指標選択 = "売上" AND 売上 > 売上閾値 THEN 1 WHEN ハイライト指標選択 = "利益率" AND 利益率 > 利益率閾値 THEN 1 ELSE 0 END
- 名前:
この計算式の内容を解説します。
CASE
文は、WHEN
の後の条件を上から順に評価し、最初に真(true)となった条件に対応するTHEN
以下の値を返します。
1つ目のWHEN
句では、ハイライト指標選択
パラメータの値が “売上” で、かつ売上
フィールドの値が売上閾値
パラメータの値より大きい場合に 1
を返します。
2つ目のWHEN
句では、指標が “利益率” で、利益率
フィールドの値が利益率閾値
パラメータの値より大きい場合に 1
を返します。
いずれのWHEN
句の条件にも当てはまらない場合は、ELSE
以下の 0
が返されます。
このように、パラメータの選択内容に応じて、条件付き書式を適用するかどうかの判定(1か0か)を動的に切り替えることができるフィールドが完成しました。
Step 4: 表に条件付き書式を適用する
最後に、作成したハイライト判定フラグ
フィールドを使って、表に条件付き書式を設定します。
- ハイライトを適用したい表を選択します。
- 右側のプロパティパネルから「スタイル」タブを選択します。
- 「条件付き書式」のセクションで「追加」をクリックします。
- 「書式ルールを作成」のパネルが開きますので、以下のように設定します。
- 色の種類:
単一色
- 書式ルール:
- 条件のプルダウンから、作成した計算フィールド
ハイライト判定フラグ
を選択します。 - 比較演算子として
次と等しい (=)
を選択します。 - 入力ボックスに
1
を入力します。
- 条件のプルダウンから、作成した計算フィールド
- 色とスタイル: この条件に一致した場合に適用したい背景色や文字色を選択します。
- 色の種類:
- 「保存」をクリックして設定を完了します。
これで全ての設定は完了です。レポートの表示モードに切り替え、設置したコントロールで指標や閾値を変更してみてください。選択した条件に応じて、表のハイライトされる行が動的に変わることが確認できるはずです。
Google Cloudサービスとの連携と考慮点
Looker Studioは単体でも強力ですが、Google Cloudの他のサービス、特にBigQueryと連携させることで、その真価を最大限に発揮します。
BigQueryとの連携
今回の例のようなレポートを、データソースとしてBigQueryに接続して作成する場合、パフォーマンスとコストの観点からいくつか注意すべき点があります。Looker Studioでフィルタやパラメータを操作すると、その都度BigQueryに対してクエリが発行されます。このクエリがスキャンするデータ量に応じてBigQueryの利用料金が発生するため、何も考えずに実装すると想定外のコストにつながる可能性があります。
コストを最適化するためには、Looker Studioに渡すデータ量を事前に絞り込むことが重要です。例えば、BigQuery側で事前に集計したサマリーテーブルやビューを作成し、Looker Studioはその結果を参照するように設計します。これにより、Looker Studioからのインタラクティブな操作のたびに巨大な生データをスキャンすることを避け、レスポンス性能の向上とコスト削減の両方を実現できます。
まとめ
今回は、Looker Studioのパラメータ機能と条件付き書式を組み合わせて、動的でインタラクティブな表を作成する方法について解説しました。本記事で解説したように、ハイライトする指標だけでなく、その閾値もパラメータでユーザーが自由に入力できるようにすることで、レポートは単なる情報の提示から、ユーザー自身が問いを立てて深掘りできる分析ツールへと進化します。
Looker Studioは、Google Cloudのサービスと連携することで、単なる可視化ツールから強力なデータ分析プラットフォームへと進化します。特にBigQueryとの連携は、大量データを扱う際のパフォーマンスとコスト管理において重要な鍵となります。この記事が、皆さんのレポート作成における表現の幅を広げ、より深いデータインサイトを得るための一助となれば幸いです。今後のレポート作成で、ぜひこの対話的なアプローチを試してみてください。
※本記事は、ジーアイクラウド株式会社の見解を述べたものであり、必要な調査・検討は行っているものの必ずしもその正確性や真実性を保証するものではありません。
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