Google Cloud Next 25 in LasVegas キーノート内容まとめ

2025/04/09に公開されました。
2025/04/10に更新されました。

新発表系を中心にメイントピックをご紹介します。


author: shintaro

はじめに

2025年4月9日~4月11日に開催されたGoogle Cloud Next 25のキーノート(基調講演)の内容について、
文字起こし→翻訳した内容に公式ブログの内容なども追加して記事化しました。 なおすでにYouTubeに動画が上がっていますので、ご興味のある方はご覧ください。 ※公式ブログにはキーノートで触れられなかった細かい点も記載されていたりします。合わせてご覧ください。

キーノート会場の様子

AIを支えるインフラの進化

AIワークロードに最適化されたインフラの強化に注力しているというお話です。

大規模なインフラ投資。サーバーとデータセンターに約750億ドル

  • Google Cloudは42リージョンに拡大。さらにマレーシア、タイ、クウェートなどへも展開中。
  • 2025年にはサーバーとデータセンターに約750億ドルを投資予定であり、AIコンピュート能力とクラウドビジネスを引き続き強化していく。

グローバルネットワークの強化「Cloud WAN (Wide Area Network)」

  • 200万マイル(約320万キロ)を超える地上および海底ファイバーネットワークを拡張。 200万マイルを超えるファイバーネットワーク拡張

  • Cloud WAN (Wide Area Network) を発表。これにより、最大40%高速なパフォーマンスと最大40%のTCO削減が期待される。

    • 具体的なサービスについては触れられませんでした。今後の発表に期待です。

第7世代TPU「Ironwood」

  • 第7世代TPU (Tensor Processing Unit)である Ironwood を発表。今年後半に提供開始予定で、前世代の「Trillium」と比較して大幅な性能向上を実現。 Ironwood
  • TPU v1と比較して3,600倍の性能向上、29倍のエネルギー効率向上を達成。

最新GPUと管理ツール「Cluster Director」

  • 最新のGPU(NVIDIA Blackwell GB200/B200)を搭載したA4/A4X VMの発表。
  • 次世代Rubin GPUの提供を予定。
  • Cluster Director (旧Hypercompute Cluster)により、多数のアクセラレータを単一のコンピュートユニットとして管理可能。

ストレージの革新。新発表の「Rapid Storage」など

Google Distributed Cloud (GDC) の進化。Geminiがローカルで実行可能に。

  • オンプレミスやエッジ環境でAIワークロードを実行可能に。
  • GeminiモデルがGDC上でローカルに実行可能 になり、エアギャップ環境や機密性の高いデータ要件に対応。
  • Dellとのパートナーシップにより、NVIDIA Confidential ComputingとBlackwellシステム (DGX B200, HGX H200) をサポート。

NVIDIA CEOのJensen Huang氏も動画で登場しました。

Gemini for Google Workspace新機能

Help me analyze (Google スプレッドシート)

  • Geminiがスプレッドシートのデータを分析してくれる。

Audio overviews (Google ドキュメント)

  • ドキュメントの内容から高品質な音声を自動生成。
    • NotebookLMのコンテンツ音声化機能(Audio Overview)とイメージは近いでしょう。

Google Workspace flows:

最先端のAIモデルファミリー: Gemini 2.5 Flash、Lyriaなどの発表

Geminiをはじめとした多様なAIモデルの開発を加速させているというお話です。
新たにLyriaというText-to-Musicのモデルが発表され、Imagen 3やVeo 2は機能が強化されました。

Gemini 2.5 Pro/Flash

  • Gemini 2.5 Pro: 200万トークンのコンテキストウィンドウを持つ、高度な推論(Thinking)能力を備えたモデル。リリース以来、Chatbot Arena Leaderboardで最高評価を獲得。本日からVertex AIでGA。
  • Gemini 2.5 Flash: 新発表の低レイテンシかつ最もコスト効率の高いモデル。推論量を調整可能で、パフォーマンスとコストのバランスを調整可能。Google AI Studio、Vertex AI、Geminiアプリで近日提供予定。

Lyriaなどのマルチモーダルモデル

  • Imagen 3: Text-to-Imageのモデル。詳細な描写や、オブジェクトの除去など性能が大幅に向上した。
  • Chirp 3: Text-to-Speechで使用されるモデル。10秒間の音声入力からカスタム音声を作成できる機能や、複数話者の識別機能などが追加。
  • Lyria: 新発表のText-to-Musicモデル。テキストから30秒の音楽クリップを生成。
  • Veo 2: Text-to-Videoのモデル。複数素材間を補完(interpolation)する機能や、インペインティング/アウトペインティングなど編集機能を持つ。

ライブデモではVeo 2のインペインティング機能、Lyriaによる音楽生成などが披露され、
それらを組み合わせたコンサート告知動画を作成していました。

また、このデモではVertex AI Media Studioという新しいコンソール画面が用いられていました。

Vertex AI Media Studio

Vertex AIの機能強化

Vertex AIは、AIモデルのカスタマイズや、評価、デプロイ、またAIエージェントの構築・管理ができる包括的なプラットフォームです。

Model Gardenの充実。MetaのLlama4がGAに。

  • Googleのモデル(Gemini, Veo, Imagen, Lyria)に加え、Anthropic、Metaなど200以上の厳選された基盤モデルを提供。
  • MetaのLlama 4がGA。

モデルごとの監視を強化

  • 新しいダッシュボード画面により、モデルごとの使用状況やスループット、レイテンシの監視が可能に。

グラウンディングの強化。Google Mapsの追加など。

  • Google Search、サードパーティソースとの連携に加え、Google Mapsが追加。
  • また、データの複製不要でNetAppストレージ上のデータとも直接連携可能に。

事例

  • Intuit (税務申告の自動化)、Nokia (コーディング支援)、Wayfair (商品属性更新)、AES (監査コスト削減)、Deutsche Bank (AIリサーチエージェントDB Lumin)、Seattle Children’s Hospital (臨床ガイドライン検索)、United Wholesale Mortgage (住宅ローン審査効率化)、Honeywell (製品ライフサイクル管理) など、多くの企業がVertex AIを活用していることが紹介されていました。

AIエージェント時代の到来

生成AIが単なるツールから、自律的に思考し、ツールを使いこなし、ユーザーに代わってタスクを実行する「エージェント」へと進化していることが強調されていました。

Agent Development Kit

  • 新発表のAgent Development Kitは、マルチエージェントシステム構築を簡素化するOSS。LangGraphやMastraと同列の概念。
  • Model Context Protocol をサポート。流行りにも乗っている。
  • Agent2Agent (A2A) Protocol により、異なるモデルやフレームワーク(LangGraph, CrewAIなど)で構築されたエージェント間の連携を実現。
    • 多くの企業がこのプロトコル定義に貢献 Agent-to-Agent

AgentSpace

  • AgentSpaceは昨年12月に発表されたサービス。Vertex AI SearchやNotebookLMなどが統合されている。
  • Chrome Enterpriseとの統合も発表され、検索ボックスから内部データの検索が可能に。

新機能としてDeep Researchも追加されます。通常のDeep ResearchはWebにある情報が対象ですが、社内データでこれができるのはすごく便利だと感じました。 Deep Research in AgentSpace

特定用途向けエージェント

  • カスタマーエージェント: Vertex AI Search for Retail/Healthcare、Contact Center AIの進化(人間のような音声、感情理解、リアルタイムビデオサポート)。Patrick Marlowe氏によるデモでは、顧客がビデオ通話で植物を見せると生成AIが品種を特定し、適切な土や肥料を推奨、さらに価格交渉や配送予約まで行う高度なインタラクションが披露された。
    • この部分はぜひデモ動画を見てほしいです。ユーザーの冗談にもユーモアが効いた返答をしますし、人間と(もしくは人間よりも)自然な会話でした。
  • クリエイティブエージェント: メディア制作、マーケティング、広告、デザインを支援。ラスベガスにあるSphereにおける「オズの魔法使い」再創造プロジェクトや、WPP、Canva、Adobeとの連携が紹介。
  • データエージェント: BigQueryとGeminiの連携強化。データエンジニアリング(カタログ自動化、パイプライン生成)、データサイエンス(コーディング支援、予測モデリング)、ビジネス分析(自然言語での分析)を支援するエージェントが登場。Yanpei Chen氏によるデモでは、BigQuery Data CanvasとColab Enterprise上で、自然言語プロンプトを使って複数ソースからのデータ統合、データクレンジング、PDFからの情報抽出、セグメンテーション、キャッシュフロー低下原因の特定、時系列予測までをAIエージェントが支援する様子が示された。
  • 開発支援エージェント (Code Assist): コードモダナイゼーション、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を支援する新エージェントを発表。カンバンボードでの対話や、Atlassian、Datadog、GitLabなど多数のパートナーとの統合。 Gemini Code Assistのカンバン機能
  • セキュリティエージェント: 後述。

Salesforce CEOのMarc Benioff氏も動画で登場。Googleとのパートナーシップと、Salesforce Einstein CopilotとGoogle Geminiの連携による「デジタルレイバー革命」への期待を語りました。

セキュリティの革新: Google Unified Security

脅威が高度化する中、AIを活用したセキュリティ対策の重要性が増しています。

Google Unified Security (GUS)

  • 新発表の統合セキュリティプラットフォーム。
  • 脅威インテリジェンス (Mandiant)、セキュリティオペレーション (Chronicle)、クラウドセキュリティ (Security Command Center)、ブラウザセキュリティ (Chrome Enterprise) などを単一のプラットフォームに統合し、AIを活用して脅威の検知、調査、対応を迅速化。

Wiz買収

  • マルチクラウドセキュリティプラットフォームのWiz買収(最終合意)も発表され、セキュリティポートフォリオのさらなる強化が示された。

オープンエコシステムと顧客事例

Google Cloudは、オープン性と相互運用性を重視し、顧客が既存のIT環境と連携しながらAIを活用できるよう支援しています。

  • マルチクラウド連携: Cross-Cloud Interconnect、Microsoft Entra ID連携、BigQuery/AlloyDBとAWS/Azureデータの連携強化。
  • ISV連携: Google Cloud Marketplaceを通じて、Google AIと統合されたパートナーソリューションを提供。
  • サービスパートナー: Accenture、Deloitte、HCLTech、KPMG、TCS、Wiproなどが、Google Cloud上で独自のAIエージェントやソリューションを発表。
  • ソブリンクラウド: 各国の規制に対応するため、パートナーと共にソブリンクラウドを提供。

キーノート全体を通して、McDonald’s、Intuit、Deutsche Bank、Salesforce、Reddit、Mercado Libre、Verizon、Sphere、Mattel、Spotify、State of Nevadaなど、非常に多くの事例が紹介され、生成AIが活用フェーズに入っていることを印象付ける意図を感じました。

※本記事は、ジーアイクラウド株式会社の見解を述べたものであり、必要な調査・検討は行っているものの必ずしもその正確性や真実性を保証するものではありません。

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