RAGとGroundingの違いを解説!
生成AIの進化を加速させるRAGとGrounding、その違いとは?混同しやすい2つの技術の違いを説明したいと思います。
Table of contents
author: Chiakoba
はじめに
エンジニアのChiaKobaです。
近年、ChatGPTをはじめとする生成AI(Generative AI)が急速に発展し、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えています。
その進化を支える重要な技術として、「RAG (Retrieval-Augmented Generation)」と「Grounding」が注目されています。
この記事でその違いを少しでも理解してくれると嬉しいです。
生成AIの進化を支えるRAGとGroundingとは?
RAGとGroundingは、どちらも生成AIの性能向上に貢献する技術ですが、そのアプローチは異なります。
Grounding:言語を現実世界の参照対象に結び付けることを重視し、AIシステムが文脈的に意味のある方法で言語を理解し、より人間らしい対話を実現する技術。
つまりは、生成AIに 「五感」 や 「記憶力」 を与えるようなものです。 人間は、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を通して外界を認識し、過去の経験や知識(記憶)と照らし合わせて、状況を理解し判断します。Groundingも同じように、生成AIに以下のような能力を与えることで、より人間に近い認識や判断を可能にします。
RAG:現実世界との接地を強化し、文脈理解やマルチモーダル情報の活用を通じて、より人間らしい対話を実現する技術。
例えるなら、生成AIに 「図書館司書」 のような役割を与える技術と言えるでしょう。
図書館司書は、利用者の質問に対して、膨大な蔵書の中から適切な資料を探し出し、情報を提供します。RAGも同様に、生成AIが以下のような手順で情報を提供できるようにします。
Grounding
Groundingの仕組みとメリット
Groundingは、生成AIを現実世界に接地させることで、より人間らしい対話を実現する技術です。具体的には、画像や音声などのマルチモーダル情報や、対話履歴などの文脈情報を活用することで、LLMの理解度を向上させます。
Groundingのメリットは、以下の点が挙げられます。
- 文脈理解の向上:対話履歴や状況を考慮した上で、より適切な応答を生成できる
- マルチモーダル情報の活用:画像や音声などの情報を理解し、それらに関連した応答を生成できる
- 人間らしい対話:より自然で共感性の高い対話を実現できる
Google CloudでのGroundingの実現方法:
Gemini
Geminiは、テキスト、画像、音声、動画など、様々な種類のデータを統合的に処理できる能力を持っています。マルチモーダルにLLMと会話が可能です。
Groundingの活用事例
Groundingは、以下のような分野で活用されています。
- ロボット制御:ロボットが周囲の状況を理解し、適切な行動をとる。
- 画像説明生成:画像の内容を理解し、人間が理解できる言葉で説明する。
- 対話システム:ユーザーの意図を理解し、より自然な対話を実現する。
RAG (Retrieval-Augmented Generation)
RAGの仕組みとメリット
RAGは、大規模言語モデル(LLM)が持つ知識の限界を補うために、外部のデータベースや検索エンジンなどの知識ソースを参照しながら文章を生成する技術です。これにより、LLM単体では不可能だった、より正確で最新の情報に基づいた文章生成が可能になります。
RAGのメリットは、以下の点が挙げられます。
- 最新情報の反映:常に更新される外部知識ソースを参照することで、最新の情報に基づいた文章を生成できる
- 幻覚の抑制:LLMが生成する誤った情報(幻覚)を、外部知識ソースとの照合によって抑制できる
- 知識のカスタマイズ:特定の分野の知識ソースを参照することで、専門性の高い文章生成が可能になる
Google CloudでのRAGの実現方法:
Vertex AI Matching Engine
Google CloudのVertex AI Vector Search(旧Vertex AI Matching Engine)は、大規模なベクトルデータベースを活用して、RAGに必要な類似文書検索を高速かつ効率的に実行できるサービスです。これにより、RAGを組み込んだ生成AIアプリケーションを容易に開発できます。
RAGの活用事例
RAGは、以下のような分野で活用されています。
- チャットボット・バーチャルアシスタント:顧客からの質問に対して、より正確で適切な回答を提供
- 検索エンジン:検索クエリに対して、より関連性の高い情報を提供
- コンテンツ生成:ニュース記事やブログ記事など、特定のテーマに沿った高品質なコンテンツを自動生成
RAGとGroundingの比較
特徴 | RAG | Grounding |
---|---|---|
目的 | 最新・正確な情報の提供 | 文脈理解と人間らしい対話 |
知識ソース | 外部データベース、検索エンジンなど | マルチモーダル情報、対話履歴など |
技術的特徴 | 情報検索、知識抽出 | マルチモーダル理解、文脈モデリング |
Google Cloudでの実現方法 | Vertex AI Vector Search | Vertex AI Vision API, Gemini |
活用事例 | チャットボット、検索エンジン、コンテンツ生成 | ロボット制御、画像説明生成、対話システム |
おまけ Vertex AI Studio の根拠づけ
Vertex AI Searchの根拠づけは、生成AIモデルが特定のデータソースにアクセスできるようにすることで、モデルの出力をそのデータに結びつけ、事実無根のコンテンツ生成を防ぎます。
これにより、生成されるコンテンツの信頼性と正確性が向上し、より信頼できる情報源として活用できるようになります。
そのため、Google Cloud Next’24で発表された「RAG」と「Grounding」の要素を組み合わせたサービスと言えます。
RAGの側面としては、外部の知識ソース(この場合はGoogle検索や独自の情報の結果)を参照して回答を生成する点、
Groundingの側面としては、ユーザーの質問や対話履歴といった文脈情報を考慮して回答を生成する点が挙げられます。
現時点(2024/05)では、プレビューの機能です。今後の進化に期待です。
まとめ
RAGは情報の正確性と最新性を向上させ、Groundingは人間らしい対話と文脈理解を可能にします。 とても似た概念で、混同しやすいですよね。
また、今回初めてGeminiと一緒に記事を書いてみました。 一人では思いつかないところまで、網羅されているなあと思いました。
Google Cloudを活用することで、あなたも生成AIとの未来を創造してみませんか?
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
参考
https://cloud.google.com/vertex-ai/generative-ai/docs/learn/overview
https://cloud.google.com/vertex-ai/generative-ai/docs/grounding/overview
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