型安全なSQLビルダーJetの解説

2024/09/25に公開されました。
2024/09/25に更新されました。

Goで型安全なSQLビルダーを実現できるライブラリJetの解説


author: qwerty2501

はじめに

Goには様々なSQLをサポートするライブラリがありますが、その中で型安全なSQLビルダーであるJetを解説します。
利用方法については公式のREADMEを読んでいただければ大体わかるのでまずそちらを参照してください。

コンパイル時にシンタックスエラーを検知できる嬉しさ

例えば以下はJetのwikiにあるSELECTのサンプルコードです。

SELECT(
    AVG(Payment.Amount).OVER(),
    MINf(Payment.Amount).OVER(PARTITION_BY(Payment.CustomerID).ORDER_BY(Payment.PaymentDate.DESC())),
    ROW_NUMBER().OVER(Window("w1")),
    RANK().OVER(
       Window("w2").
       ORDER_BY(Payment.CustomerID).
       RANGE(PRECEDING(UNBOUNDED), FOLLOWING(UNBOUNDED)),
    ),
    AVG(Payment.Amount).OVER(Window("w3").ROWS(PRECEDING(1), FOLLOWING(2))),
).
FROM(Payment).
WINDOW("w1").AS(PARTITION_BY(Payment.PaymentDate)).
   WINDOW("w2").AS(Window("w1")).
   WINDOW("w3").AS(Window("w2").ORDER_BY(Payment.CustomerID)).

これを生SQLにすると以下のようになります。

SELECT AVG(payment.amount) OVER (),
     MIN(payment.amount) OVER (PARTITION BY payment.customer_id ORDER BY payment.payment_date DESC),
     ROW_NUMBER() OVER (w1),
     RANK() OVER (w2 ORDER BY payment.customer_id RANGE BETWEEN UNBOUNDED PRECEDING AND UNBOUNDED FOLLOWING),
     AVG(payment.amount) OVER (w3 ROWS BETWEEN 1 PRECEDING AND 2 FOLLOWING)
FROM dvds.payment
WINDOW w1 AS (PARTITION BY payment.payment_date), w2 AS (w1), w3 AS (w2 ORDER BY payment.customer_id);

この量のSQLを間違いなく記述する自信が筆者にはありません。
これを書き間違えたらコンパイル時に検出してくれるのは非常に嬉しいです。

テーブル定義はSQLで書く

これは好みが分かれるところですが、テーブル定義はSQLで書いて定義します。
ORMライブラリではコード上の定義と実際に実行されているテーブル定義がどのようになっているか想起しにくいと筆者は感じているのでこっちのほうが好みです。
テーブル定義を書き間違えていたとしてもDBを起動できないことで気づけるのでデメリットもそこまでないと考えています。

他のSQLビルダーと比べて

他のSQLビルダーと比べて嬉しいのはJetはテーブル定義からGoのコードを生成してくれることです。
例えばexampleにある以下のようなcategoryテーブルがあるとします。

CREATE TABLE dvds.category (
    category_id integer DEFAULT nextval('dvds.category_category_id_seq'::regclass) NOT NULL,
    name character varying(25) NOT NULL,
    last_update timestamp without time zone DEFAULT now() NOT NULL
);

これをJetでコード生成するとmodelパッケージとtableパッケージにcategoryテーブルのコードが生成されます。
例えばcategoryテーブルに対して問い合わせたい場合は以下のようにフィールド名も含めてGoのコードで記述できます(フィールド名も含めてコンパイル時に間違いを検出できます)

query := SELECT(table.Category.AllColumns).
WHERE(table.Category.Name.LIKE(String("%カテゴリの名前%")))

var categories []model.Category
if err := query.QueryContext(ctx,&categories); err != nil{
    return nil,err
}

for _,category := range categories {
    fmt.Sprintf("category.name:%s",category.Name)
}

sqlcと比べて

事前にSQLを記述してそこからGoのコードを生成するライブラリとして sqlc が存在しますが、その違いとしてはよりsqlcのほうがより静的であるという点です。
例えば以下のように与えられた引数に応じてクエリを組み立てたい要求があった場合、sqlcでは対応するのが難しくなります。(sqlcには現状 動的にクエリを組み立てる仕組みはない ため)
以下の例はJetのものです。

query := SELECT(table.Category.AllColumns)

var conditions []BoolExpression
if args.Name != nil{
    conditions=append(conditions,table.Category.Name.LIKE(String("%"+*args.Name+"%")))
}
if args.StartLastUpdate != nil {
    conditions=append(conditions,table.Category.LastUpdate.GT_EQ(TimestampT(*args.StartLastUpdate)))
}
if args.EndLastUpdate != nil {
    conditions=append(conditions,table.Category.LastUpdate.LT_EQ(TimestampT(*args.EndLastUpdate)))
}

if len(conditions) > 0{
    query = query.WHERE(AND(conditions...))
}

if args.Offset != nil {
    query = query.OFFSET(*args.Offset)
}
if args.Limit != nil {
    query = query.LIMIT(*args.Limit)
}

var categories []model.Category
if err := query.QueryContext(ctx,&categories); err != nil{
    return err
}

for _,category := range categories {
    fmt.Sprintf("category.name:%s",category.Name)
}

このようにJetでは動的なクエリの組み立てにも対応できるのが利点です。

まとめ

  • テーブル定義からGoのSQLビルダーコードを生成します
  • ORMではないですが、テーブル定義をもとにmodelとしてstruct型を生成できます
  • 生成したGoコードをもとにSQLを組み立てるので単純なシンタックスエラーはGoコードコンパイル時に検出できます
  • 動的なクエリ組み立てにも対応できます

以上です。いかがでしたでしょうか?


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